「お付き合いしている方がいます。え? 結婚? はは、考えてるところです。」

 

好きな人が出来たからと言って、付き合えたからと言って、一緒に住んでいるからと言って、他人のわからない未来についての結婚や出産に結びつける人が殆どだ。好きだからと言って、一時の感情に自分の未来や、今までの思考を蔑ろにして、自らのクローンを作るなんてばかな真似はしたくない。

それだけじゃない。私だって自分自身がこんなふうで無ければきっと幸せそうに籍を入れて、胸元には赤子を抱いているだろう、きっと。

でもこんなふうになってしまった私にはそれでは駄目なのだ。

 

私はもう忘れたのか。もう終わりにしたいと唇を噛み締めてロープを首に掛ける感覚を、アルコールとドラッグを流し込んで嘔吐く感覚を、手首に滑らせた刃物を、寝ている間にどうか死ねますようにと願う毎晩を、平然と訪れ絶望する朝を、世界を呪ったあの瞬間を、血の味を。

 

自分の愛する人にそういう思いは掛けたくない。苦しみを知って欲しくない。私だけが知っていればいいのだから。

避妊薬を飲み続けて、いつの日か卵管を縛れますように。その暁には自分の女である性質への呪縛が解けますように、