コンクリート

タバコが辞められない。しかし血栓が怖い。その天秤にかけられて勝ったのはタバコで、私はピルを辞めた。

 

こんなに毎日死にたいって手首を切り叫んでいるのに、血栓が怖いからってピルの服用を辞める人がどこにいるんでしょう。…私ですけど。

その癖、世の中に生にくるしむ人間をこの肉体から産み出したくない、避妊はしたい。でも五年飲み続けたピルは血栓が怖く、卵管結紮をするにはまだ怖い。

そんなわがままな人間、どこにいるんでしょう。…何もかも、私ですけど。

情けない、でも意図しない中で本当に死ぬのは怖いよ。

 

男の人は避妊しなくても妊娠しないのずるい。

避妊だけでピルを買うと五年で十八万円もするのばかばかしいけど買うしかないね。生殖機能、本当に要らない。気持ち悪い。生殖機能は二十歳を超えるまでは備わってなくて、車みたいに免許制になればいいのにな。きっと無理だけど。

性交渉を拒めない、しないと価値があると思えない私と、赤子を孕める私が気持ち悪くて毎日が辛い私。「あの、もしもし。今日は開いていますか。お薬の予約をしたいんですけど」

結局また怖さに打ち勝てず、婦人科に電話をする。

 

よわい。でも世の中に私の遺伝子が増えることよりよっぽどマシ。でもなんだかとても惨めだ。

コロナウイルスの第一波がおさまったのと同じくして私のピル休薬はたったの二週間で終わった。

生にも性にも苦しめられているの。せかいで私だけがどん底にいる気がする。浮かべない。しかも沈めない。ここは暗くて冷たくてなんだかコンクリートのなかみたいです。SOSは伝わらない。思いは散る。

 

とんとん、だれか。きこえますか。

 

 

黒に青のパッケージが特徴的なそのタバコを捨てた。

さよなら、唯一のストレス発散方法。そしておかえり、私の避妊手段よ。