血は水より濃い

リビングにいるとき。その日の運が悪かったら母親が怒る。または、祖母が怒る。

 

あ、だめだ、と思って慌てて机の上を片づける。外に逃げるためだ。

どうしてもリビングから脱出できそうにない時は、Netflixを少し大きめの音量で開く。今日はどちらも間に合わなかったけれど。

 

祖母はよく私を「可愛げのない子」と言い、母親は「あんたなんて産むんじゃなかった」「私ばっかり」と言う。

 

そして私は静かに手首を切るか、刃物が近くになかったら

祖母や母親と同じように「私ばっかり」「なんで私ばっかり責めるの?」と泣く。

 

つくづく似てきていると思う、心底なりたくない二人に。 

あんな風になりたくないのに、恋人や弟を私と同じ気持ちにさせたくないのに。

 

手首を切るのは死にたいからじゃない。構って欲しい訳でもない。

私は手首を切らないと、つい母親や祖母のようにヒステリックに叫んでしまうから。

痛みで誤魔化すのだ。叫びたい気持ちを。

 

あの人たちと一緒になりたくないから。

似ていないと思いたいから。

 

一刻も早くこの家から出たい。

 

 

これ以上あの人たちに似ない為にも。

感化されないように、同情しないように、

 

これ以上手首を切らないでいいように。

 

社会人になったら、いちばん深いリストカットの上からカバータトゥーを入れようと思っている。

 

この忌々しい血は、私で終わらせたい。

 

▪️

新しい恋人と付き合って半年が経った。

 

すきじゃない。

 

 

すきじゃないのに、恋人だ。

 

でも

すきと思っていない人とも出掛けられるし、楽しく愛を囁くこともできる。もちろん、キスも、性交渉も、できる。たとえその人のことをすきじゃなくても。

その人のために死ぬ以外のことなら 大抵はこなしてみせる。

 

わたしにとっての愛は、わたしが消えることだ。

 

だからこの人とは別れない。

だからあの人の隣を離れた。

 

これがわたしにとっての哲学で、愛だ。

 

そりゃ、すきな人しか抱きしめたくない、すきな人にしか抱きしめられたくない人間は多いだろう。

 

それで良い。

 

誰もわからなくていい。

 

わかって欲しい。

わかって欲しくない。

そのせめぎあいからいつまで経っても抜けられる気がしない。

愛は消える。ロウソクの炎みたいに、たばこの火みたいに、ピンク色の炭酸みたいに。

 

消えてほしくない、と思う。

 

ばかばかしくて、笑いが止まらなかった。

 

すきじゃない人に別れたくないと迫るわたしが、

気持ち悪くて仕方ない。

 

 

 家に帰ってきて夜中の二時。お風呂に入って、ご飯が食べたくなってオムライスを作って食べて、吐いて、リポドリンを飲んで、またお風呂に入った。お風呂は好き、汚くないから。だから汚れた浴室は嫌いです。ピカピカにお風呂は磨きあげることも私の日課かも。

 今からはカリウムをせっせと摂って、その後にブロンをのむかサイレースをのむか、マイスリーを飲むか悩み中。リポドリンを追加してもよし。

 はやく痩せないといけない。オバサンになってから痩せるんじゃ意味ないしさ。若さは武器だというけれど、太っているなら話は別だもんな。

 

 私の知っている私とあなたの知っている私はおそらく違う。

 そしてあなたの知っている私とあなたじゃない誰かが知っている私もきっと違うだろうう。

 

 私がいつか居なくなったら、これを読んでいるあなたが本当の私を見つけて欲しい。こんなのを読んでる人はたぶん私の関係者だから。

 これは生きている私からのおねがいです。面倒な頼み事はいつもだから許してほしいな。

 

 確かに私はユミちゃんだったしチワワちゃんだった。

 

 

 

 

 

伊豆諸島

サイレースを飲んでも眠れなかった。

 

折角なので今日は読書の日にしたいと思います。

 

まずは角田光代の八日目の蝉かな。

中学時代に毎日毎日読んでいたけれど、何年経っても忘れられない。

 

「その子はまだ朝ご飯食べてないの」

 

 

甘受しておやすみ

眠るためにサイレースをのんだ。睡眠薬を服用したときの人工的な眠気がすき。どうしようもなく、ぼやけてきた意識にこのままどうか眠ったまま覚めませんように。朝が来なくなればいいと願った。

 

 

緑色の夏が終わって あなたはいなくなった

 

 

幸せになって。あなたとの未来に私もいたかったな。あなたの邪魔になってしまって、 本当にごめんなさい

 

 

 

愛してる。

 

四月十四日

 大学の書類漏れがあったので街の郵便局まで出掛けた。

 近頃猛威をふるっているコロナウイルスの影響で、来月まで大学が封鎖になった。そのせいか入学してもう二週間が経ったという実感もいまだに湧かない。本来ならば明日(正確には今日)の十五日に初めての講義の予定だった。かなり楽しみにしていたのでとても残念。仕方が無いけれど…。夏休み、友人にチェコマルタ島に行こうと計画しているので夏頃にはおさまってくれるとありがたいな。笑 あと、大学の入学前課題のテーマを「ジェンダー」について書いたのだけれど、それを評価してくださった教授のジェンダー論講義を受けたかったのに、それは必修科目の時間割と被っていたので取れなかった。ほんとうにショック。二年で取れるように祈っておこう。

 

 三島由紀夫のような人間が今の日本には必要じゃないのか、なんて思ったりもした。

三島由紀夫というと愛の渇きが好きだ。

「……美代の妊娠で私の苦しみは完成された筈だというのに、まだ何か足りないのかしら、その完成にはもっと怖ろしいものが附け加わらねばならないのかしら。」

 

 嫉妬は怖い。色欲と独占欲は互いに作用しながら徐々に徐々にと私の呼吸を奪っていく。蛇が塒を巻くように、まるで毒を盛られたみたいに。時には忘れられないような高揚感を魅せながら。

 ほら、いつだったか宇多田ヒカルも「欲張りは身を滅ぼす」って言ってたもの。